今回はGoogleが開発した「Duplex」についてご紹介していきたいと思います。Duplexとは電話代行ソフトウェアのことで、非常に高性能なボットのようです。今後、このDuplexがさらに発達していくことで、“人間とボットの区別がつかない未来”がやってくるかもしれません。

Googleが開発した「Duplex」とは

2018年11月上旬にGoogleは「Duplex」についてのデモンストレーションを実施しました。Duplexがレストランの予約客、Google社員がレストランの従業員役という形で「ええと、明日の食事の予約を入れられますか?」とDuplex側からの一声で会話が始まり、Google社員はDuplexに対して予約者の名前や人数についてなどの細かい質問をしました。それに対してDuplexはそつなく対応し、最後には明るい口調で「では、よろしくお願いします」と言って会話を終えました。

最初にDuplexは「わたしはGoogleの自動予約サービスです。この通話は録音させていただきます」と、電話の相手に知らせてから会話を始めています。しかし、このお知らせ以外はほどんど人間と話しているのと区別がつかなかったそうです。

人と聞き違えるほどの「声」の威力

Googleの発表によると、年内ににDuplexはニューヨーク、フェニックス、アトランタ、サンフランシスコ・ベイリアで同社のスマートフォンである「Pixel」で利用可能になるといいます。DuplexはApple社の「Siri」の競合のGoogleアシスタント機能として搭載されます。現在のところ、Duplexが電話をかけるのはネット予約を受け付けていないレストランに対してのみのようです。Duplexのリリースは、Googleアシスタントの機能に大きな変化をもたらすわけではないのかもしれません。しかし、AIが我々の日常生活へ浸透していく新たな節目になるのではないでしょうか。

Googleをはじめとする企業がAIに投資した結果として、コンピューターが人の言葉や顔を認識するのはもはや当たり前となりました。しかし、音声認識サービスの代表ともいえるApple社のSiriやAmazonのAlexaでさえ、人間と混同することはありません。今回のDuplexは自ら電話かけ、まるで人間かのように会話をすることができるソフトウェアというのはこれまでとは違う感じがします。

人間と区別がつかないという危機感

GoogleのCEOであるサンダー・ピチャイ氏が5月の年次開発者会議でDuplexをお披露目した際には、感嘆の声が上がる同時に警告の声も上がりました。なぜならば、予約を入れるためにDuplexがレストランと美容院に電話をした時、何も知らない従業員に対して自分がAIであることを名乗らなかったからです。これに対してGoogleの広報担当者は、現在はボットが電話をかける時には、自らAIであることを必ず明らかにするポリシーがあるといっています。

Duplexは現在でも人間のような音声と、「あの」「ええと」「うーん」などいった間投詞を使っています。Google検索とGoogleアシスタントの製品およびデザインを統括するニック・フォックス氏は、「電話に出る人間に対して、ボットにどう合わせようかと考えさせたり、人間相手とは違いスムーズに会話ができないと思わせたりするべきではありません」と、このような間投詞はDuplexの通話を簡潔に、そして円滑に進めるために必要だと述べています。

ボットと話をしていたつもりが

2018年の6月に実施されたデモンストレーションでDuplexからの電話に出た「WIRED」のUS版ライターのローレン・グッド氏の体験は、人間のように話すボットがいかに人の感覚を失わせる可能性があるかを示してします。

Duplexの電話に出たグッド氏は、レストランの予約可能時間について話をしている最中に、アレルギーに関する質問を投げかけてDuplexを混乱させました。混乱したDuplexの手順を修正するために、第2の音声が代わりにグッド氏と会話しました。後に、その第2の音声がDuplexのボットではなく、コールセンターの人間だったということを知らされたといいます。ボットと話していたつもりが、まさか本当の人間だったとは思いもよらなかったでしょう。

飲食店が懸念していることとは

今回のプロジェクトを担当しているフォックス氏は、DuplexはWin-Winの製品だと話ます。なぜならば、Googleのユーザーは外出の計画を立てる時に自分で電話をかける手間がなくなりますし、ネット予約ができないレストランは新規の客を得られるからです。ネット予約ができない店舗は、ネットで予約ができないから予約しないという人々がいるため損をしているのです、とフォックス氏はいいます。

しかし、レストラン業界を知る人々の中には、電話がかけやすくなりすぎることの弊害を懸念している人もいます。サンフランシスコ・ベイエリアにあるレストラン業界団体である「ゴールデン・レストラン・アソシエーション(GGRA)」のグウィネス・ボーデン理事は、このDuplexを使ってダブルブッキングを行い、その後に来店しない人やレストランに何度も電話する人が出てくるのではないか、といいます。

ボーデン理事の話では、Duplexの試用期間や初披露の前にGoogleから何の連絡もなかったといいます。「Duplexが本当に役に立つものだと信じているのなら、なぜわたしたちと協業しないのでしょうか」ともボーデン理事は話しています。これに対してGoogleの広報担当は、業界団体にはこれから連絡する予定だと語りました。

Duplexからの電話の最中にレストラン側は、Duplexの電話を受けないという選択をすることもできるといいます。Google検索やGoogleマップのサービス一覧を管理するサイトで、その選択をすることも可能のようです。また、万が一Duplexの通話がうまくいかない時には、DuplexがGoogleのコールセンターに連絡して、人間のオペレーターが通話を引き継ぐとのことです。

今回のDuplexのような新な技術というのは人類に発展や革新をもたらす反面、ボーデン理事が語ったような懸念点もはらんでいます。ただ便利になる、という観点だけでなく、さまざまな角度から見ることが大切でしょう。